連載コラム『ティーブレイク』(26)
2025.09.12 技術研究、コラム
老い - 人の歩み -
皆さんは、通勤時に利用する車両・座席がいつも同じ方や通勤路の同じ場所ですれ違う方がいませんか。
ある時期、通勤時に同じ時間帯に同じ場所ですれ違う高齢の男性の方がおられました。その方は、片方の足を少し引きずるような感じでゆっくり歩いておられた70前後くらいの方です。年齢、服装、時間帯から、仕事をリタイアされ健康のために、朝、一人で散歩をしておられるのかな、羨ましいなと思いながら毎日すれ違っていました。
ある時、足の引きずり方が重くなっていることに気付きました。これは単なる散歩ではなく、体の障害などによるリハビリのための運動ではないかと思うようになりました。
その後しばらくすると、杖を突きながらの歩行となり、見るからに歩くのが大変そうでした。これは、完全に歩行訓練の様相を呈してきており、リハビリの効果が十分ではなく病状が進行してきているのではないかと思われました。
そうこうする内に、杖ではなく、キャスター付きの歩行補助具を使いながら歩いている姿を目にするようになりました。この頃になると、明らかに表情が険しくなり、一人で一生懸命歩いているのですが、バランスを崩すと怪我が心配になるような状態でした。一人で大丈夫かな、家族はいないのかなと心配してしまうほどでした。
次の段階では、車椅子に乗り自分で不自由な足を必死に動かしながら歩行(移動)されていました。補助具の時より安定感は増したのかもしれませんが、歩行は大変そうで、表情はより一層厳しくなっていましたが、相変わらず一人で頑張っておられました。
その方にお目にかかれたのはここまでです。ある時からお会いできなくなりました。時間帯を少しずらしてみたり、通勤路を変え周辺を歩いてみたりしましたが、お目にかかることはありませんでした。外出ができない状態になられたのでしょう。介護施設に入所されたのか、寝たきりになられたのか、わかりません。
男性は、どうして介添え者もなく、いつも一人で、必死の形相で一生懸命歩いておられたのか。歩道は、段差や傾斜があり幅が狭いなど、健常者でも歩きにくいことがありますので、障害がある身には尚更とてもつらい状況であったと思います。そんなハンディをものともせず、自分の足での歩行に拘りを持っておられたのだと思います。不自由な体になっても、最後まで諦めず、一人何かに挑むような姿は昭和世代男性の生き様を世に見せているようでもありました。老いに抗うのではなく、どう挑んでいけるかが、人生ということでしょうか。
私は、ある一時期だけですが、あなたの生き様をしっかり拝見させていただきました。ナイス、ファイトでしたよ。
日本の65歳以上の人口は増加の一途を辿っています。9月15日は敬老の日ですが、年老いたら家族とともに、老後を楽しむなどと甘いことを考えていてはいけないのかもしれません。どのような状況に追い込まれることになっても、常に一人挑む姿勢が大切だということでしょうか。
さて皆さんは、どのような人生を歩んでいかれますか。
2025年9月5日 TTC参事 菊谷 彰