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連載コラム『ティーブレイク』(16)

2024.01.04 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(16)

 

 どうする日本!

 

 令和6年(2024年)という新しい年が始まったが、年末年始にかけ自動車メーカーの認証試験不正に端を発した車両出荷停止、能登半島地震、航空機衝突事故と日本を揺るがすような大きな出来事が続き、期待というより不安な幕開けとなったのではないだろうか。

 特に、不正については中古車販売会社による事故車修理に伴う保険金不正請求、電機メーカーにおける品質不正、福祉・介護施設における不正請求など、製造業にとどまらずサービス業など広範囲に及び大きな社会問題となってきている。かつて日本の品質は世界に誇れるものの一つであり、世界的な信頼を得ていたはずだが、いつの頃からかその信頼が揺らぎ始めている。
 こうした中、昨年1月、日本品質管理学会が品質不正防止に関する一つのレポート「テクニカルレポート品質不正防止」(JSQC-TR12-001:2023)を学会規格として出版した。本レポートは、意図的に標準、 契約、 法令等に反した製品・サービスを市場に出す問題を「品質不正(違反、隠蔽、改ざん、捏造)」として捉え、現場で何が起こっているのか、その要因は何か、防止のために組織や社会は何を行うべきかをまとめた技術資料である。

 その中で不正を行った組織の第三者委員会が公表した調査報告書を分析し、共通的な特徴として説明されている不正要因を次の8項目にまとめている。
 1)コンプライアンス意識がない
 2)品質保証部門が機能不全(品質管理への関心低下、コスト・効率優先等)
 3)人の固定化、業務の属人化(人事・人間関係の固定化、縦割り組織等)
 4)収益偏重の経営(人・設備への投資抑制、売上至上主義等)
 5)監査が機能していない
 6)工程能力がないのに生産している(能力を超える受注等)
 7)管理されていない(現場任せ、検査結果の検証不足等)
 8)教育されていない(現場教育不足、顧客クレームなければ品質問題ない等)

 なるほどと思える内容であり、不正が行われていた期間が長期間に及び品質不正が慣習化していた実態も浮かび上がっている。

 そうした中、再発防止策としていくつかの項目が記載されているが、その一つに「組織の風土改革」がある。この品質不正を許さない組織文化の醸成が難しく、結局不正を繰り返すことになるのではないかと思われるが、本レポートでは不正を起こしにくい組織、望ましい組織として次のような例が示されている。
 ①正規手順・基準の遵守(ルールを守る)
 ②変化点への着目(変化や変更への敏感な対応)
 ③全社に共通する価値観(経営者、現場の共通の価値観形成)
 ④他者の活動への関心(組織構成員の活動に対する積極的な関心)
 ⑤多様なコミュニケーション(階層間、組織間等のコミュニケーション)

 これまた、的確な指摘ではないだろうか。
 不正に対し、真の要因を捉えた効果ある対策の実施が必要であり、人と組織が関わる中ではマネジメントの重要性が求められる。
 私は、決して品質管理学会の回し者ではありませんが、関心をお持ちの方は是非、本レポートをお読み頂きたい。そして、不正防止への道筋を各組織、各人が自ら考え、具体化し、実践して頂きたい。

 このまま不正が続けば、日本の国際競争力は低下し、信頼や安心を失うことになる。変えるのは今です。今年を日本再生の幕開けにしなければならないのではないでしょうか。

 「どうする日本!」

 2024年1月4日  TTC参事  菊谷 彰