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連載コラム『ティーブレイク』(15)

2023.11.01 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(15)

 

 ラグビーワールドカップから学ぶ

 

 先月(10月)4年毎に開催されるラグビーの第10回ワールドカップフランス大会が南アフリカの優勝で幕を閉じた。連日、熱戦が繰り広げられたが、特に南アフリカは準々決勝から決勝までの3試合全てを1点差で勝ち優勝するという、大変エキサイティングな大会であった。本大会を見ながら十数年前にジュニアの世界大会が日本で開催されたときのことを思い出した。

 それは、名古屋の瑞穂ラグビー場でアイルランドの試合をナイター観戦していた時のことである。当時の日本では、ラグビーへの関心はまだ薄く、テストマッチ(国代表同士の試合)であるにも関わらず寂しい雰囲気の試合会場であった。試合開始前に両国の国歌斉唱が行われるが、アイルランドの国歌が始まろうとするとき、一人の女性がすっと立ち上がり胸に手をあて美しい歌声で歌い始めた。競技場の夜空に響き渡るその歌声に私は魅了されてしまった。はるか遠く異国の地にあって、たった一人で母国を応援する姿に感動し、心密かにアイルランドを応援(いや、その女性を応援したのかもしれない)したことを思い出した。記憶をたどっても対戦相手がどこの国で、どちらが勝ったのかも覚えていないが、アイルランド、国歌斉唱、女性が一つになって記憶として残っていた。

 そのアイルランド、今大会は世界ランキング1位で臨み、予選リーグを全勝で勝ち抜き、ベスト8(準々決勝)の時点で、テストマッチ17連勝と勢いに乗っていた。対するのはワールドカップで3度の優勝を誇る世界王者ニュージーランドである。ベスト4進出をかけたこの試合、終了間際の数分間に及ぶ逆転のトライ(トライすると得点が5点入る)を狙うアイルランドの凄まじい猛攻に耐えたニュージーランドが4点差で勝利したが、ノーサイド(試合終了)の合図とともに、アイルランドの選手がグランドに倒れ込んだ。精も根も尽き果てるまで全力を出し切った姿かと思われたが、実はそれ以上の理由があったのだ。今まで7度ベスト8に進出し、全て跳ね返され敗退を重ねてきたが、今回は世界ランキング1位の実力を予選リーグから遺憾なく発揮し、優勝をも狙っていたが、またもやベスト8の壁を超えることができなかった悔しさが試合後の選手の姿となっていたようである。アイルランドの選手たちはどうして自分達はベスト8の壁を打ち破ることができないのか。どれだけ鍛え努力しても超えられない壁があるのかと思ったことだろう。

 このアイルランドのシーンを見ながら、ある人のことを思い出した。日本のプロ野球でもかつて、西本幸雄という監督が阪急や近鉄というチームを率いて日本シリーズに8度挑戦し、一度も勝つことができず、日本一の監督になることができなかった。その時、西本監督は負けるということは何かが足りないのだとコメントしていたと記憶している。勝負の世界に生きる人は実に厳しい。負けるということは負けるだけの原因があったことを素直に認め、次のステップを目指すのだ。

 我々、計量証明業界では仕事をする上において必要な国家資格がいろいろあるが、その中でも環境計量士という資格は難関でなかなか簡単に合格できない。何度も挑戦し、合格できないと心が挫け、諦めそうになるのではないかと思いますが、何度失敗しても、運のせいにせず、足らない何かを見つけ合格を勝ち取りましょう。来月(12月)には環境計量士の試験がありますが、受験生の皆さん頑張ってください。失敗した分だけ、成長した自分が待っているはずです。

 恐らくアイルランドも勝つために足らないものを見つけ、4年後にはまた新たなチームでベスト8突破、そして優勝を目指し、挑戦してくれることでしょう。

 アイルランド頑張れ! 受験生頑張れ!

 2023年11月1日  TTC参事  菊谷 彰