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連載コラム『ティーブレイク』(2)

2021.09.16 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(2)

~ 50年ひと昔 ~

 

 ある環境系の機関紙を読んでいるとこんな記事が目に飛び込んできた。

 『環境庁発足から50年』

 そうか、環境庁が発足(1971年7月1日)してから早や50年になるのか。当時、自分が将来環境に関連する仕事に就くとは夢にも思わなかったが、公害問題が社会的に大きく取り上げられる中、公害対策や自然保護に関する専門の行政機関ができてよかったなという程度の認識しかなかった。

 この記事を読みながら、ある人物の活躍が朧気ながら蘇ってきた。その人は、2代目環境庁長官の「大石武一」である。当時、群馬、福島、新潟の3県にまたがる尾瀬に観光自動車道を通す計画があったが、尾瀬の大自然を守るため道路建設をストップさせた方である。発足したばかりの環境庁が巨大な既得権益を持つ建設省、厚生省、農林省など関係省庁を相手によくぞ道路建設をストップさせたものだと感心したものである。

 環境庁(2001年から環境省に昇格)は、大石長官のもと華々しいスタートを切ったわけであるが、その後の環境行政はどう推移したのか。国内では公害対策などに担当省庁として取組み、成果を残すとともに、その経験をもとに中国や東南アジアの環境問題解決のために協力・支援を行い、国際的にも評価を得てきたのではないだろうか。そんな日本がいつの間にか環境政策で先進国に対し大きく後れをとり、気候変動対応では海外の環境団体から「化石賞」という不名誉な賞をもらう国になってしまった。

 大変、悔しい思いをしてきたが、遅ればせながら昨年日本は「2050年カーボンニュートラル」宣言を行い、脱炭素社会に向け大きく舵を切ろうしている。再び環境行政の真価が問われることになる。第2の大石武一は現れるであろうか。世界をリードする環境立国日本に期待したい。

 実は、私共(TTC)も今年10月に奇しくも設立50周年を迎える。脱炭素、SDGsに取組み、持続可能な社会をつくり出そうとしている日本において、TTCは50年の実績をもとに第二創業期として新しい組織、事業展開を目指していくことになる。次の50年に向け、環境省、日本とともに、新しい船出である。

2021年9月16日  TTC参与  菊谷 彰