連載コラム『ティーブレイク』(1)
2021.06.29 技術研究、コラム
~ 若者の夢 ~
2021年6月のとある日、中日新聞県内版に懐かしい記事を見つけた。タイトルは、「工業高生 専門技術競う」。記事は、県内の工業高校生がもの作りの技術を競う大会が始まったとの内容であり、滴定分析にて水の硬度を測定する高校生の写真が添えられていた。
思い起こせば3年前、私はこの場に審査員として参加していた。あの日の高校生諸君の真剣な眼差しや競技会場にピーンと張りつめた心地よい緊張感が昨日のことのように思い出される。そうだ!記事と同じあの時も滴定分析による水の硬度が競技項目だった。あの当時の高校生は今何をしているのだろうか。大学に進学あるいは社会に出て、大会で競った化学分析の技術を活かしているだろうか。
大会に出場する高校生の中には、就職先として我々分析業界を目指す学生がいるという話を大会関係者から聞き、分析業界に身を置く者として大変うれしく思った。甲子園大会で活躍した高校球児がプロ野球選手に憧れプロを目指すのと同じではないか。分析会社はプロ野球の球団であり、我々は彼らにとって憧れのプロの技術者なのである。
ここで「本当にそうか?」などと変に勘ぐってはいけない。我々は、憧れの存在でなければいけない。期待を裏切るのではなく、業界に身を置く先輩として彼らの夢を実現させる責任が我々にはある。夢は実現させて初めて意味あるもの、価値あるものとなる。それができるのは我々である。
2021年6月29日 TTC参与 菊谷 彰