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連載コラム『ティーブレイク』(3)

2021.11.17 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(3)

~ COP26に寄せて ~

 

 今月(11月)、イギリスで開催されていた「COP26(国連気候変動会議)」が何とか合意に達したとのこと、まずは何よりです。気候変動という地球規模的な取り組みの難しさを如実に表した会議であったように思いますが、わが国の取り組みはどのように評価されているかといいますと地球温暖化対策に後ろ向きな姿勢を批判され、国際環境NGOから「化石賞」を贈られました。昨年も同賞を受賞しており、大変残念な結果となりました。

 残念なニュースといえば、こればかりではありません。もう一つ悲しいニュースが先月(10月)、新聞各社から一斉に報じられました。

 『京大霊長類研究所、事実上「解体」へ』

 皆さん、ご存じですか。地元、愛知県犬山市にある世界的に有名な霊長類の研究施設である、京都大学の霊長類研究所が解体されるというニュースです。理由は、研究費の不正支出とのことですが、唯々残念でなりません。同研究所は、人間の起源と進化の解明を目指す、国内唯一の霊長類の総合研究所であり、世界の霊長類研究を牽引してきた施設です。

 チンパンジーの認知能力の高さを示した研究やサルの歩行からヒトの直立二足歩行の起源と進化に関する研究など、世界的に有名な研究が行われていました。私も何度か同研究所を見学し、その研究の素晴らしさに感銘を受けました。因みに、チンパンジーの認知能力(パソコン上に映し出された数字を瞬時に記憶する)を示す実験に私も挑戦しましたが、まったく歯が立ちませんでした。チンパンジーの認知能力の高さに驚くばかりでした。同研究所が解体されても霊長類の研究は別の組織で継続されるとのことですので、今後も世界を驚かせるような日本発の研究に期待しています。

 見学時に聞いた話の中で霊長類の優れた能力に、認知能力とともに社会性があります。霊長類であるヒトも社会性を活かし、世界的な規模で気候変動に対処してほしいものです。ヒトの進化と気候・環境は切り離せない関係にあるはずです。

 霊長類の優れた能力を世界的な気候変動対応の場で示し、地球温暖化に立ち向かう日が来ることを願わずにはいられません。

2021年11月15日  TTC参与  菊谷 彰