連載コラム『ティーブレイク』(21)
2024.11.26 技術研究、コラム
定点観測と早弁
あるテレビ番組を見ていて、学生時代に先生から指導を受けた二つの事柄を思い出した。
一つ目は、定点観測である。
先生曰く、「怠惰な学生生活を送るくらいなら、毎日ある場所で同じ風景や物象を観察してみなさい。継続している内に何某かの変化に気づくはずだ」ということであった。当時は、そんなことして何が面白いのかなという程度の印象しかなかったが、社会に出て仕事をするようになると、大変重要なことをご指導いただいたと気づかされることになった。
例えば、空であれば雲の形・大きさ、海であれば波の形・高さなどを観察していると、ある時ふと出現頻度の高い形や大きさがあることに気づく。それを起点(標準)とすることにより、そこからの変化に気付きやすくなる。さらに、その変化をスケッチすることにより、変化は質的にも量的にもより鮮明になる。鮮明になると、変化の原因が知りたくなり、そこからは何故の連続となり、定点観測が本格化する。
環境調査や分析の仕事をする上において、起点(標準)を見つけ出し、そこからの変化を記録、解析していく手法は基本的な取組姿勢となる。好奇心、探求心、そして継続がなければ、定点観測は成立せず、物事の真理は解明できない。
二つ目は、早弁である。
ある時、研究室で実験のレポートをまとめていたが、お昼を過ぎると学生食堂が混雑するので少し前に食堂に行こうとすると、先生から「君は食事をするのも忘れるくらい勉強したことがあるのか」とお叱りを受けた。当時は、何故叱られているのか理解できなかったが、これまた社会に出てからお叱りの意味をいやというほど思い知らされることになった。
新規事業の立上げやお客様からのクレーム対応業務などを担当するようになると、生半可な対応では仕事は捗らず、お客様に満足していただける対応もできない。正にもがき苦しむことになった。それこそ、寝食を忘れ、食事も喉を通らず眠れない日々を過ごすこともあったが、真摯に仕事に向き合い、逃げることなく継続して取り組むことでやっと突破口が見えてきたように思う。
指示された作業の意味も理解できず、作業をほっぽり出し食事のことばかり気にする私をここで指導しておかないととんでもない学生を世に送り出してしまうことになると危惧され、厳しくご指導いただいた先生には感謝しかない。
調査や分析に携わるものにとって、好奇心、探求心、継続は大切であり、時には寝食を忘れるほど、物事にのめり込むことも必要であろう。今の世の中、「寝食も忘れ集中して仕事しろ」と指導しようものなら直ぐにハラスメントで訴えられてしまうだろうが、人を育てる上において、叱ることも大切なことではないだろうか。
さて、皆さんの会社では定点観測や早弁が話題になることはありますでしょうか。
2024年11月11日 TTC参事 菊谷 彰