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連載コラム『ティーブレイク』(5)

2022.03.11 技術情報 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(5)

認知バイアス?!

 

 学生時代、実習で高知県を訪れた折に、先輩から「高知県出身の有名な学者を知っているか」と聞かれ返答に窮していると、「お前は勉強してないな」と厳しいご指摘をいただきました。
 先輩曰く、その学者は寺田寅彦先生とのことでした。寺田先生は、X線、潮汐、震災などの研究で業績を残された地球物理学者です。先生は、防災科学の先駆者的な方ですので、『天災は忘れた頃にやって来る』という有名な言葉を残されています。寺田先生の名前は知らなくても、この言葉をご存じの方は多いのではないでしょうか。

 未曾有の大災害となった、東日本大震災から早や11年が経過しました。復興がなかなか思うように進まないとか、災害の風化ということを耳にしますが、災害を風化させてはいけません、『天災は忘れた頃にやって来る』です。
 災害時に逃げ遅れて被害が大きくなるということがあります。これは何故だろうと思っていましたが、最近、脳科学に関する講演を聴講する機会があり、興味ある話を伺うことができましたので紹介します。

 人間の脳の働きに、「認知バイアス」(先入観、誤った信念、誤解などにより偏った考え方をする)というのがあり、災害時には3つのバイアスが働くということです。
 ①現状維持バイアス(大きな変化を怖れ今まで通りのやり方を維持しようとする)、②凍り付き症候群(事故や災害で逃げる時間があるにも関わらず、ぼう然とし思考が停止する)、③楽観バイアス(自分に悪いことは起こらないだろうと思う)で、被災者の実に80%に②の症状が発生し、③のバイアスが働くことで避難や対処行動の遅れにつながり被害を拡大させるとのことです。

 なるほどと思い当たることばかりです。
 災害時に何の根拠もないのに、自分だけは大丈夫だ、大したことは起こらない、自分だけ大騒ぎするのはみっともない、前回逃げたけど何も起こらなかったなど、このような心理が命を危険に晒すことになります。

 偏り(バイアス)は、精度管理を命とする我々分析者にとって大敵ですが、防災の観点からも注意しなければいけない脳の働きです。認知バイアスを自覚し、事前準備でしっかり対処していきましょう。
『天災は忘れた頃にやって来る』

 2022年3月11日  TTC参与  菊谷 彰